スイス北東部・シャフハウゼンに拠点を置く、大手高級時計メーカーのIWC。「ポルトギーゼ」や「ポートフィノ」などと並び、メゾンを代表するモデルとして知られるのが「パイロット・ウォッチ」です。
その初代「マークシリーズ」こと、「パイロット・ウォッチ・マーク 11」の誕生75周年を記念して、「パイロット・ウォッチ・マーク XX」にシルバーダイヤルの新たな2バージョンが発表されました。一つはブラックのカーフスキンストラップ、もう一つは5リンクSSブレスが組み合わされたモデルとなります。
2022年にマークシリーズの最新作として発表された同モデルですが、今回のシルバーダイヤルの追加により、ブルー、グリーン、ブラックという幅広いラインナップからダイヤルを選べるようになりました。
より美しく、より使いやすく
新たに追加された「パイロット・ウォッチ・マーク XX」のニューモデルですが、装いが新たになったのはダイヤルだけではありません。まず、SSケースはサイドのシルエットに見直しが加えられています。ラグをよりスリムにしてカーブを強めたことで、手首へのフィット感の向上が図られています。また、文字盤の夜光塗料とブラックの針によって、より多くの照明条件の下で高い視認性が得られるように設計されています。
搭載するムーブメントは、IWC自社製ムーブメントのキャリバー32111です。シリコン製の脱進機と双方向爪巻き上げ機構を採用し、5日間のパワーリザーブを誇ります。
「EasX-CHANGE®システム」が採用され、工具を使うことなく素早く簡単にストラップやブレスレットを交換することが可能に。アクセサリーとして多様なストラップとブレスレットが用意されており、好みに応じて時計をカスタマイズすることも。さらにカーフスキンストラップやSSブレスレットに加え、耐久性に優れた斬新で鮮やかなカラーの柔らかい防水性ラバーストラップも選ぶことができます。
イギリス空軍に鍛えられた「パイロット・ウォッチ・マーク 11」という歴史
さて、この「パイロット・ウォッチ・マーク XX」ですが、その歴史をたどると1948年にイギリス空軍のために納入された「パイロット・ウォッチ・マーク 11」にたどり着きくのですが、そこにはIWCとイギリス空軍の歴史が凝縮されていると言えます。
航空機の黎明期、パイロットは太陽や月など天体の位置を用いて緯度と経度を特定していました。この方法は、六分儀とクロノメーターが必須となるのですが、当時のナビゲーション・ウォッチは多くの問題を抱えていたと言います。特に障害となったのは、進入時に使用される「レーダースクリーン」。強力な磁場を生成し、時計の精度に悪影響を及ぼす可能性があったのです。
こういった問題に対処するために、イギリス空軍は新しいナビゲーション・ウォッチの開発を要請。そうしてIWCが1948年に納入したのが「パイロット・ウォッチ・マーク 11」だったのです。IWCはこの時計に搭載されたムーブメント「キャリバー89」を軟鉄製のインナーケースに収めることで、強力な磁場からの保護に成功したのです。完璧な視認性もまた、イギリス空軍が要望するものでした。そこで「パイロット・ウォッチ・マーク 11」では、夜光塗料を塗布したコントラストの効いた文字盤を採用。視認性が低下する時間帯でも時刻を読み取りやすいように工夫が施されたのです。